大学時代のレポート①
アメリカ型スポーツクラブのマーケティング
研究目的
スポーツをビジネスとして捉え、マーケティングに力を入れ莫大な収益を上げているアメリカのプロスポーツクラブ。そのマーケティングを研究することによって日本プロスポーツクラブのマーケティング力を向上させることを目的とする。
そもそも、スポーツマーケティングとは広瀬一朗が著書『スポーツマーケティングを学ぶ』の中で「スポーツを利用した企業活動」と、「スポーツの普及拡大」とが複合し、メディアを通じた「メディア価値を利用」して目標に向けた最適な解答を得るためにマーケティングを行うビジネスが、「スポーツマーケティング」なのである。と定義づけている。そして、スポーツマーケティングでは、メディアとの関係が最も重要なファクターなのである。としており、スポーツマーケティングの最も基本的な構成要素となっている人気の第一のバロメーターとして動員を上げている。
近年、日本のプロスポーツクラブは親会社の広告塔としての役割を果たすだけでは成り立たなくなってきている。不況が長く続き宣伝広告費として何億もの赤字補填によって経営していくことはかなりの負担で撤退や合併を余儀なくされる企業もあった。そういった状況下でプロチームは独自に稼ぐ力を必要不可欠としマーケティングに力を入れ始めた。日本のプロ野球界では動員力を強化するため様々なイベントを行っている。実際に、いくつかのスタジアムで観客動員が大幅に増加しメディアでも注目を集めている。Jリーグでは観戦時の臨場感を高めるため観客動員数に合わせたサイズのサッカー専用スタジアムの建設が進められている。(署名活動などが盛んに行われている)さらに、川崎フロンターレを筆頭とし、サッカーの枠にとらわれない地域に密着したマーケティングを展開することで動員力の強化を図っている。プロスポーツ界全体としては、発達の目覚ましいITを利用したマーケティングにも力を入れ始めた。SNSなどメディア媒体の進化によって不特定多数によるリアルタイムでの感動の共有が可能になり新たなマーケティングが始まっているのだ。
また、日本の人口減少によって国内市場が縮小されていくことなどの観点から、新たなマーケットを確保するため、海外に目を向けた戦略がとられている。特に経済発展が著しいアジアのマーケットをどう確保するかに注目が集まっている。北海道日本ハムファイターズの陽岱鋼選手を利用したマーケティングなどが例に挙げられるであろう。このように日本のスポーツ業界では様々なマーケティングを実践している。
しかし、その一方でNPBとMLBの収益格差は毎年大きくなり、Jリーグはパフォームグループと新たに10年2100億円の放送権契約を結ぶなど今後の発展が期待されるが観客動員に関しては近年横ばいとなっており、各クラブの資産価値はヨーロッパ主要リーグとの隔たりが大きくなっている。このような現状を改革するためにスポーツビジネスの最前線であるアメリカのスポーツクラブを研究する。
RQの設定
今回はメジャーリーグサッカー(以下MLS)とMLS参加クラブの一つであるシアトル・サウンダースFC(以下サウンダース)の経営方法にスポットを当てる。
アメリカではNFL、MBL、NBA、NHLが4大プロスポーツとして大変盛んである。しかし近年急成長を遂げこの4大スポーツに割って入るのではないかと言われているスポーツがある。それがMLSである。MLSは発足からわずか20年余りで人気の面ではNHLを追い越すほどに急成長を遂げている。Global Sports Salaries2015によると2014シーズンの平均観客数は19148人で、MLSより3年先に始まったJリーグの平均観客数を約2000人近く上回っている。そして近年ではヨーロッパのリーグで活躍した有名選手を数多く獲得しアメリカ国内のみならず海外からも注目されている新興サッカーリーグである。
MLSが注目される大きな理由は上記のように有名選手の獲得もあげられるが最大の理由はその独特のリーグ構造とマーケティング方法によって確実な市場規模の拡大と健全なクラブ運営を成功させているためである。MLSの特徴として①シングルエンティティ②サラリーキャップ制③ドラフト制④サッカー専用スタジアム⑤サッカー・ユナイテッド・マーケティング(以下、SUM)があげられる。これらに加え、選手よりもまずフロントやスタジアムなどに対する投資を積極的に行うこと。チケットセールスに特に力を入れており各チーム数十人の人材をチケットセールス部門に確保しているだけでなく、チケットセールス営業を学ぶ学校を創設していること。若い世代をターゲットとしたマーケティングを展開していること。リーグ所属選手の人種が多種多様であること。
さらに環太平洋エリアのサッカー発展やアジアマーケットへの進出をSUMが中心になって進めている。この独特のマーケティング方法は2016年に日本で発足したバスケットボールのプロリーグであるBリーグにおいて模倣されている。このような点からもMLSを研究することで日本のプロスポーツの発展に大きく寄与できることと考えられる。
そして、MLSの中でもサウンダースは2009年にMLSに加入した初年度から平均入場者数が3万人を超え2013年シーズンには4万人を超えるという短期間で急成長を遂げた大変珍しいチームである。サウンダースはファンとの結びつきを重要視し、ファン自らがクラブの成長の力になっていることを実感してもらうことを第一に考え様々な施策を行っている。地元シアトルでは野球やバスケなど様々な競合があるにも関わらず人気を誇っている点も興味深い。Jリーグでは地域密着のクラブ経営を重要視し、近年NPBにおいても観客動員を増やしているチームには地域密着、ファンとの繋がりが重要視されている。このことからサウンダースのファンとともにクラブを作る経営戦略の研究は日本のプロチームの参考になるものである。さらにサウンダースはMLSのチームでは珍しくサッカー専用スタジアムを有しておらずNFLと共有でセンチュリーリンクフィールドをホームスタジアムとしている。これはサッカー専用スタジタムが整備されていないというデメリットがJリーグのチームと似ている。以上の点からも日本のプロスポーツチームにそのマーケティング方法が応用なのではと予想しMLSとともにRQとして設定した。
まとめ
今回は研究目的とRQの設定を明確化した。
今後の日本のプロスポーツの発展のためMLS並びにシアトル・サウンダースのマーケティングを研究していく。
今後の研究方法
- 参考文献を読み込みスポーツマーケティングの基本概念を覚える。
- MLSの歴史と独特なリーグ構造についてポイントを絞って把握する。欧州や日本との違いを比較研究する。
- SUMが行ったことを調べ、その効果を数値化する。←どうやって?
- シアトルが元々どういった土壌であったのか調べ、サウンダースの歴史やマーケティングにどのようにかかわっていたのかまとめる
- サウンダースのマーケティングの理念と具体的な施策、その成果を目に見える形でまとめる
- 現地で確認する・・・?(ファンや現地住民、関係者へのインタビュー?)
全体として具体的な事例に対し、なぜうまくいったのか理由を明確に説明できるようにマーケティングについての知識を深めることを中心に取り組む。
数値化による客観的な証明ができるようにデータをそろえていく。